01大東駿介俳優

誰かになるための振り幅を、胸に

多くの役を演じることは、さまざまな人生の引き出しを増やす作業でもある。どんな心をも宿すために、体を、器を、作り替えていく。映画や舞台、ドラマにとどまらず、バラエティ番組やイベントMCなどでも活躍_する俳優・大東駿介。“ネガティブだからポジティブ”と自称する彼に、体を動かすことと生き方のかたちについて話を聞いた。

――普段の生活で、大東さんが走るのはどんなときですか。

仕事が終わってから走りたくなることが結構あります。(千原)ジュニアさんが以前「どんな日でも、充電ゼロで家に帰りたい」って言っていて、すごく納得したんですよね。だから充電80%くらいで帰ってきちゃうと「あれ? 俺、今日ちゃんと仕事できてたのかな」って思う。エネルギーを一日でちゃんと使い切る、そういう帳尻を合わせるために走りに行くのがまずあると思います。

あとは、台本を読んで、今の体じゃ成立しない役だと思ったとき。たとえば2014年春にやった舞台『もっと泣いてよフラッパー』では元木こりのボクサー役だったので、深夜にラーメンやステーキを食べて、プロテインを飲んで、3ヶ月で15kgくらい体重を増やしました。その夏には舞台『カッコーの巣の上で』で、母親に大きなコンプレックスがある精神病患者の役をいただいたため、20kg減量。食事を減らすのは最後の手段にしたいから、一番手っ取り早く体をしぼれるのが走ることなんですよね。

――もともと、走り始めたきっかけは何だったんでしょうか。

24歳のとき、番組の企画で東京マラソンに参加したことですね。フルマラソンって、走るのをやめるタイミングとかペースとか、途中でいっぱい選択があるじゃないですか。体や環境みたいな不確定要素も多いなか、自分で選びながら進んでいく感じが人生みたいやなと思って……そのとき、まだ24年しか生きてないくせに。めちゃくちゃしんどくて、歩いてしまえばレースを終わりにできるのに、歩けない。今歩いたら俺、この先の人生でも大事なときに歩くんちゃうかな、って思っちゃったんです。途中で歩く癖がついたらアウトだって考えてたこと、すごく覚えてる。だからこそ走ることが面白いと思えたし、めちゃくちゃはまった時期がありました。

――走ったり、運動をすることで、メンタルにはどんな変化がありますか。

役のために不摂生をしていたり、休みの日も家で何もしない状態を続けていると、心が重くなってきて……いい判断ができる脳みそじゃなくなっていくのがわかるんですよね。あきらかに遠回りだったり、曲がった答えにたどり着きそうになったり。でも、走っているとシンプルに答えが出せるなって思います。どれだけ悶々と悩んでいても、体を動かすと救いになる。「でも俺、今すごい生きてる」とか「でも、体は結構動くよね」とか“でも”が助けてくれるんです。

俺はちょっとしたことですぐ落ち込むけど、それが悪いことだとはまったく思いません。極論を言えば、ネガティブってことはポジティブだなと思う。やっぱり、無感情が一番のネガティブなんですよ。何も考えない、なんとなく生きてるっていうことが一番のネガティブ。何か目標や目的があるからこそ、そこに及ばない自分に嫌気がさすのがネガティブなら、そもそもの意志や出発点はポジティブですよね。それがなかったら、すごく怖いと思う。何も考えずに「自分は最高」なんて思ってたら、今ごろ俺の人生はめちゃくちゃ薄っぺらいでしょうね。問題をもつっていうことは、人生が潤ってる証拠なんじゃないかなと思ってます。

――大東さんが思う、俳優というお仕事について聞かせてください。

俳優は自分が出てしまう、生き方が出てしまう仕事なのかなって思います。でも、だから自分はまっとうに生きたい、ってことでもない。僕はどんな役でもやりたいし、ひとつを極めたいわけじゃないから、いろんなことに偏りをもっていたいんです。すごくストイックな役を演じているときは、もしかすると言っていることがまるで違うだろうし、すごく汚い役をやっているときはこの取材に呼ばれてないと思うし……そういうふうに、どうせなら極限まで偏って生きたい。自分がどこまで偏れるか、今回はどこに偏れるかっていうのは、仕事をするうえでいつも思ってますね。考え方は嫌でも自分の中から出てくるものなので、どこまでそれを変えられるか。クズにはクズの、エリートにはエリートの生き方があるから、役に応じて両方をやりたいんです。俳優は「たかだか人間ってこんなものだよ」って表現する仕事。だからこそ、本気で取り組んだらめっちゃ面白いと思ってますね。

Photo:Takashi Imai/Text:Sakura Sugawara

PROFILE

大東駿介
1986年大阪府生まれ。2005年、ドラマ「野ブタ。をプロデュース」(日本テレビ)でデビュー。その後、数々のドラマ、映画、舞台にて活躍中。現在、NHK大河ドラマ「花燃ゆ」(毎週日曜20時)に出演中。

INFORMATION/出演情報

・映画「海難1890」12/5(土) 公開
・劇団鹿殺し活動15周年記念公演「キルミーアゲイン」
 1/9(土)〜1/20(水) 下北沢本多劇場にて
・映画「グッドモーニングショー」2016年公開予定